著者: 安藤広大 タイトル: とにかく仕組み化

こんな人におすすめ
* 組織を率いる立場にある経営者、中間管理職、チームリーダーの方
* 将来リーダーを目指す若手社員やプレーヤーの方
* 個人の努力に依存せず、持続的に成果を出せる組織を作りたいと考えている方
* 「個の時代」と言われる現代社会で、組織における個人の役割に悩んでいる方
* 仕事や日々の行動を効率化し、継続的な成長を望む方
この本を読もうと思った理由
「個人の能力に依存しない組織を作りたい」──そう考える中で、安藤広大さんの著書『とにかく仕組み化』の存在を知りました。世の中では個人のカリスマ性やアイデアが重視されがちですが、本当に持続的な成果を生み出すのは、強固な「仕組み」なのではないかという疑問を抱いていました。
その仕事が、その人にしかできない事、それによりその人が抜けると誰も仕事をカバーできない、そんな経験あるのではないでしょうか?
本書のプロローグを読み、その疑問に対する明確な答えと、これからの時代に求められる組織運営の本質が提示されていることに強く惹かれました。特に、「人が動く」ことの真髄と、「歯車」という言葉に対する誤解を解き明かす内容には、自分自身の考え方に変化を与えてくれました。この本は、私の組織運営に対する考え方を根本から変えるきっかけになると思い、これから読み進め、自分自身に落とし込んでいけるようにしたい、そう思いました。
「人」を動かす本質としての「仕組み化」
本書が提唱する「仕組み化」は、一般的なビジネスモデルや商品開発の話ではありません。あくまで「人」をいかに動かすか、という組織の本質に焦点を当てています。スティーブ・ジョブズの成功が個人のアイデアだけでなく、それを実現させるための徹底した規律と試行錯誤を繰り返す「組織」によって支えられていたように、どんなビジネスモデルも最終的には「人」が重要です。個人の能力に依存するのではなく、全員が効率的に動く「仕組み」こそが、ビジネスを成功に導く両輪となります。
「歯車」という言葉への誤解と「組織あっての個人」
「社会の歯車」と聞くと、個性を否定されるように感じるかもしれません。しかし、本書は「歯車」として生きる覚悟の重要性を説きます。鳥の群れやアリの巣がそうであるように、個々が役割を果たすことで組織全体の大きな目的が達成されます。自分が替えの利く存在であることを受け入れ、与えられた機能を果たし、評価をもとに試行錯誤する。この「歯車になる」という覚悟こそが、個人の成長の始まりであり、どんな環境でも活躍できる人材になるための鍵となります。
形骸化した「古い仕組み」を壊し「新しい仕組み」でアップデートする責任
「仕組み」や「ルール」には、理不尽なイメージがつきまとうことがあります。しかし、それは過去に問題解決のために作られたルールが、形骸化して残ってしまっていることが原因です。人の上に立つ者は、その責任を引き受け、古いルールをアップデートしたり、その意図を組織全体に浸透させたりする「仕組み」を構築する必要があります。過去の成功体験に固執せず、常に変化に対応できる柔軟な仕組みこそが、組織を成長させる原動力となります。
マニュアル軽視の風潮を打破し、忠実に実行することの重要性
現代ではマニュアルを軽視し、書かれた通りに実行することを馬鹿にする風潮があります。しかし、マニュアルは先人たちの膨大な失敗と苦労の結晶です。まずはマニュアルに忠実に実行することで、基礎が身につき、その上で初めて「個性」や「新しい発見」が生まれます。安藤氏の会社でも、識学講師マニュアルを徹底的に叩き込むことで、講師それぞれの個性が引き出されています。マニュアルを軽んじず、まずは忠実に実行する姿勢が、個人の成長と組織全体の改善につながります。
「性弱説」を前提とした「仕組み化」のメリットと「貢献できる人」を生み出す仕組み
人間は基本的に楽をしたがる「性弱説」を前提に考えるべきです。個人の「頑張れ」に頼るのではなく、「なるべく早く」といった曖昧な指示ではなく「3時間以内に返信」のように具体的なルールを設けることで、人は迷わず動けるようになります。また、個人のスキルを独り占めするのではなく、積極的に他者に教え、組織全体に貢献する仕組みを作ることが重要です。マニュアル作成を通して、貢献せざるを得ない状況を作り出すことが、組織の成長を加速させます。
「替えの利かない人」という幻想と「属人化」のリスク
「替えの利かない人になりたい」という願望は誰にでもありますが、組織においては「替えが利くようにしておく」ことが逆説的に優秀さの証です。組織に「仕組み」があれば、エース社員が抜けてもピンチを乗り越え、より強固な組織へと脱皮できます。属人化は、特定の個人に業務が依存する危険な状態であり、その人がいなくなると組織が停滞するリスクを抱えます。優秀な個人が集まる組織ではなく、「優秀な人が不在でも機能する組織」こそが真に優秀な組織であり、そのためには「属人化を壊す」覚悟が必要です。
組織の成長を促す「とにかく仕組み化」のための5つの考え方
- 「責任と権限」を手に入れる(第1章): 決めたことを守り切る。
- 「危機感」を利用する(第2章): 正しい恐怖を感じ続ける。
- 「比較と平等」に気をつける(第3章): 正しく人と比べる環境を整える。
- 「企業理念」を再認識する(第4章): 自分がどこに向かっているかを迷わない。
- 「進行感」を感じる(第5章): 他者と共に大きなことを成し遂げる。
これらの概念は、人の上に立つ者にとって特に重要であり、組織の役職が上のポジションにある人ほど深く理解し、実践する必要があります。
「全員の納得」という呪縛からの解放と「ビジョン」「パーパス」も「仕組み」の一部
新しい仕組み導入には必ず反発がつきものです。しかし、「成長したい人が成長できるかどうか」という基準で判断し、既得権益を持つ人や成長を諦めた人たちの反発に負けてはいけません。「不適切な人にはバスを降りてもらう」というスタンスで、意欲の高い人が残り続ける組織を目指すべきです。また、ビジョンやパーパスといった抽象度の高い概念も、日々の業務を滞りなく進めるための「仕組み」の一部として捉え、目の前のことから逃げる言い訳にしてはなりません。
読んでみた感想
『とにかく仕組み化』のプロローグを読み終え、これまでの私の組織に対する考え方が大きく変わりました。特に印象的だったのは、「歯車」という言葉に対するネガティブなイメージを払拭し、むしろ組織を機能させる上で不可欠な要素として肯定的に捉える視点です。
「性弱説」を前提に、人間の本質を見抜き、それを前提とした仕組みを構築するという考え方は、非常に実践的で説得力がありました。「頑張れ」という精神論に終始するのではなく、具体的なルールや期限を設定し、誰もが迷わず動ける環境を整えることの重要性を痛感しました。
また、「属人化」のリスクについても深く考えさせられました。個人の能力に依存する組織は、一見すると優秀に見えますが、それは同時に大きなリスクを抱えているということです。組織が持続的に成長するためには、個人の突出した能力に頼るのではなく、誰が抜けても機能する普遍的な「仕組み」が必要不可欠であると理解できました。
本書で紹介されている5つの考え方は、リーダーとしてだけでなく、個人としての成長にも直結すると感じました。目の前の仕事に集中し、与えられた役割を果たすことの重要性を再認識し、それを「仕組み」として捉えることで、日々の業務がより明確になるはずです。この本は、単なるビジネス書ではなく、社会人としての「生き方」そのものについて深く考えさせられる一冊だと感じました。
本日のまとめ
安藤広大さんの『とにかく仕組み化』のプロローグから、組織と個人の成長における「仕組み化」の重要性が深く理解できました。
- 「人」を動かす本質は「仕組み」にある: 個人の能力やアイデアだけでなく、それを支える強固な「仕組み」が成功の鍵です。
- 「歯車」は成長の入口: 個として機能し、組織の一部となることで、自己の成長と組織への貢献が両立します。
- ルールは常にアップデート: 形骸化したルールを放置せず、責任を持って新しい仕組みへと改善していく姿勢が求められます。
- マニュアルを尊重する: 忠実に実行することで基礎を固め、その上で個性を発揮し、新たな改善につなげます。
- 「性弱説」に基づく仕組みづくり: 人は楽をしたがるという前提で、具体的なルールや期限を設定し、誰もが成果を出せる環境を整えます。
- 「属人化」はリスク: 特定の個人に依存する組織は脆弱であり、誰が抜けても機能する普遍的な「仕組み」を目指すべきです。
- 「とにかく仕組み化」のための5つの考え方: 「責任と権限」「危機感」「比較と平等」「企業理念」「進行感」は、組織を成長させるための羅針盤となります。
- 「全員の納得」より「成長」を優先: 変化には反発がつきものですが、「成長したい人が成長できるか」を基準に判断し、ブレない覚悟が必要です。
本書は、組織、自分自身の仕事に対する見方を変える、そんな一冊になりそうです。皆さんもぜひ手にとって、少しづつ実践してみてはいかがでしょうか?

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