著者: 安藤広大 タイトル: とにかく仕組み化

こんな人におすすめ
* 組織を率いる立場にある経営者、中間管理職、チームリーダーの方
* 将来リーダーを目指す若手社員やプレーヤーの方
* 個人の努力に依存せず、持続的に成果を出せる組織を作りたいと考えている方
* 「個の時代」と言われる現代社会で、組織における個人の役割に悩んでいる方
その「権力」正しく使えてるますか?組織を動かす「責任と権限」の真髄
現代社会で「権力」という言葉を聞くと、どこかネガティブな印象を持つ方も多いのではないでしょうか。政治の不正や組織の不祥事が頭をよぎり、「権力=悪」と捉えがちです。しかし、本当にそうなのでしょうか?
実は、組織を健全に機能させ、成長を促すためには、この「権力」、すなわち「責任と権限」を正しく理解し、行使することが不可欠です。
個人の能力に依存する「属人化」から脱却し、誰がやっても成果が出せる「仕組み化」された組織へと変革していく上で、リーダーがまず身につけるべきは、この「責任と権限」の考え方なのです。
今回は、安藤広大さんの著書『とにかく仕組み化』から、第1章「正しく線を引く―『責任と権限』」のエッセンスを抽出し、皆さんの組織運営やキャリア形成に役立つヒントをお届けします。
「いい権利」と「悪い権利」を見極める
組織における「権力」とは、正しく行使されるべき「権利」のことです。この権利には、「いい権利(権限)」と「悪い権利(既得権益)」が存在します。
「いい権利」は、その範囲が文章として明確にされており、誰が見ても「部長が決めることだ」と一致するものです。
一方で「悪い権利」は、明文化されていない曖昧なルールや慣習で、特定の人だけが持っているように振る舞う権利を指します。
例えば、「この件はAさんに話を通さないと」といった、見えない決まり事がこれにあたります。これらが組織内の認識のズレを生み、トラブルの元となるのです。
リーダーは、この「悪い権利」を認識し、積極的に排除していく責任があります。
「線を引く」ことの重要性、そしてその線は書き換え可能である
人の上に立つ者には、自身の責任に基づいて意思決定し、明確に「線を引く」ことが求められます。
例えば、会議でのスマホ利用について、賛否両論があったとしても、「話を聞くこと」と「情報の正確性」のどちらを優先するかを明確にし、決断することです。
全員を納得させようとして例外を設けたり、曖昧な線引きをしたりすることは、後々のトラブルの種となります。
そして、一度引いた線も、状況の変化や新しい情報によって最適な形へと書き換える柔軟性が必要です。
過去の決まりを盲目的に引き継ぐのではなく、「私がそう判断した」と自らを主語にして、責任を持ってルールを運用することがリーダーの役割です。
「不満」ではなく「事実」を伝え、「仕組み」で組織を動かす
ルールを変更する際、「朝令暮改」と批判されることを恐れてはいけません。
仕事における「正解」は常に変化するため、ルールもそれに合わせて柔軟に変える必要があります。
この時、リーダーだけでなく、メンバーも「個人」を責めるのではなく「仕組み」を責めるべきです。
不満をぶつけるのではなく、「このルールがあることで、現場の作業に30分余分に時間がかかっています」といった具体的な事実を伝え、改善を促しましょう。
また、組織内で「不満で仲良くなる」関係性からは卒業し、事実に基づいた情報共有と、リーダーの正しい判断に従う仕組みを構築することが、組織の成長には不可欠です。
「任せる」とは「責任と権限」を明確にすること
リーダーは「部下に仕事を任せなさい」と言われますが、これは単なる「丸投げ」や「無責任」とは異なります。
本来の「任せる」とは、「何をしなければならないか」「そのために何をやっていいか」という責任と権限を明確に文章化して与えることを指します。
部下が自由に動ける範囲を示し、責任を果たせなかった際に「権限が足りなかった」という言い訳が通用しない状態にすることで、部下は自ら必要な権限を求めてくるようになり、組織は非常に良い状態になります。
この「責任」と「権限」の認識のズレをなくすことが、効果的なマネジメントの基本です。
「能力」は「機会」によって育つ。多様な経験が「優秀さ」を形成する
マネジメント能力は、生まれつきのものではありません。
リーダーに任命され、「責任」と「権限」を与えられるという「機会」によって育まれるものです。
「得意なことだけを仕事にしたい」と考える人もいますが、どんな仕事にも苦手な部分はつきものです。
不足を認識し、それを埋める努力をすることで、人は成長します。
「なんでも平均的にできる人」は現代では軽視されがちですが、変化の速い時代において、あらゆる部署や業務に適応し、試行錯誤を通じて再現性のある方法を見出す能力こそが、真の「優秀さ」なのです。
読んでみた感想
『とにかく仕組み化』の第1章を読み、組織における「責任と権限」の重要性を改めて深く認識しました。
これまで漠然と抱いていた「権力」へのネガティブなイメージが払拭され、むしろ組織を円滑に運営し、個人の成長を促す上で不可欠な要素であると理解できました。
特に印象的だったのは、「いい権利」と「悪い権利」という明確な区分けです。
私自身の経験を振り返っても、明文化されていない「悪い権利」が原因で、組織内で認識のズレや摩擦が生じていた場面が多々ありました。
リーダーが「私が決めた」と毅然として線を引くことの重要性、そしてその線が状況に応じて書き換え可能であるという柔軟な視点に、ハッとさせられました。
また、「任せる」ことの本質が、単なる丸投げではなく「責任と権限の明確化」にあるという点も納得です。
部下が自ら権限を求めてくるような組織が「いい状態」であるという記述には、理想的なマネジメントの姿が描かれていると感じました。
そして、「能力は機会によって育つ」というメッセージには、大きな勇気をもらいました。
完璧な人間などおらず、どんな人も「不足」を埋めることで成長し続けられるという考え方は、キャリアを考える上で非常に前向きな視点です。
この章を読み、私自身もリーダーとして、そして一員として、組織の「仕組み」を見直し、より貢献できる存在になりたいと強く感じました。
本日のまとめ
安藤広大さんの『とにかく仕組み化』第1章「正しく線を引く」から、組織の健全な成長を促すための「責任と権限」の重要性を学びました。
* 「責任と権限」は組織運営の要: 「権力=悪」という誤解を捨て、正しく行使されるべき権利として認識しましょう。
* 「いい権利」は明確化されている: 明文化された「権限」は組織を円滑に動かす力に。曖昧な「悪い権利(既得権益)」は排除すべきです。
* リーダーは「線を引く」責任がある: 意思決定を先送りせず、明確な線引きを行い、状況に応じてルールを柔軟に書き換えましょう。
* 「事実」に基づき「仕組み」を改善: 個人の不満ではなく、具体的な事実を伝え、ルールや仕組みの改善につなげます。
* 「任せる」とは「責任と権限」を与えること: 部下に明確な役割と裁量範囲を示し、自律的な成長を促しましょう。
* 「能力」は「機会」で育つ: ポストに就いてからこそ能力は育つもの。多様な経験を通じて、適応力を高めることが真の「優秀さ」につながります。
この「責任と権限」の考え方は、組織を強くし、個人の成長を加速させるために不可欠な考え方ですね。ぜひ、今日からあなたの組織や日々の仕事に活かしてみてくださいね。

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